幻の花

第十五章「みちのく小町」

みるめ刈る あまの行き交ふ 湊路に 勿来の関も 我は据えねど  それから小町たち四人は那珂、高萩な…

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第十四章「東下り小町」

唐衣きて馴れにし 妻しあれば はるばる来ぬる 旅をとぞ思ふ  貞観十年(八六八年)桜の咲く三月、深…

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第十三章「霧隠れ小町」

霧の中 いづ方なりや 如何せん 小舟に乗りて 川下りけり  貞観十年(八六八年)二月の或る日、侍医…

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第十二章「里帰り小町」

月やあらぬ 春や昔の 春ならぬ わが身一つは もとの身にして  神泉苑での雨乞い小町に続いての清涼…

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第十一章「草紙洗い小町」

まかなくに 何を種とて 浮草の 浪のうねうね 生ひ茂るらむ  貞観九年(八六七年)になると小野小町…

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第十章「歌姫小町」

九重の 重き衣を 脱ぎ捨てて ともに寝なまし 山科の宿 応天門事件のような恐ろしい事件があっても、…

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第九章「忍び泣き小町」

この旅は つくづく悲し もの言わず 島がくれゆく 君を思へば  ところが世の中は、ままならぬもので…

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第八章「雨乞い小町」

千早振る 神も見まさば 立ち騒ぎ 天の戸川の 樋口あけ給え  貞観八年(八六六年)六月になると、長…

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第七章「流れ星小町」

色見えで 移ろふものは 世の中の 人の心の 花にぞありける  小町が宮仕えに慣れ始めた貞観八年(八…

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第六章「宮仕え小町」

世の中は 飛鳥川にも ならばなれ 君と我とが仲し 絶えずば  貞観七年(八六五年)秋十月、業平の兄…